有吉佐和子さんのおすすめ小説

有吉佐和子さんのおすすめ本のコーナーです。

歴史小説・恋愛小説・推理小説・ミステリー小説・現代小説・純文学など、読書好きで小説ファンのわたしが、最近話題の本やこれまでに読んだ本のあらすじや感想、書評、そして、面白いおすすめ小説を紹介しています。

特に、ここに『 おすすめ小説 』として紹介した有吉佐和子作品は、わたしが読んだ有吉佐和子さんの小説の中から、『 感動した小説 』や『 おもしろい小説 』 などを管理人の独断と偏見で選び、各々にあらすじや感想、書評を記載して一覧にしたもので、これからも随時更新していく予定です。


有吉佐和子さんのプロフィール

有吉佐和子さんは、1952年「文藝春秋」に転載された『地唄』が芥川賞候補となり、一躍注目されるようになりました。
その中でも、『複合汚染』は日本の公害問題を追求した有吉佐和子さんの代表作です。
他に女流文学賞を受賞した『華岡青洲の妻』、老人介護に題材にした『恍惚の人』、三代にわたる女の系譜を、郷里である紀州の素封家を舞台に描いた長編小説『紀の川』などが有吉佐和子さんの代表作です。
有吉佐和子、1931(昭和6年)生まれ、和歌山県出身。享年53。





★ 不信のとき

不信のとき(上)

おすすめ度


愛人と子供の存在が妻にバレた時、愛が憎しみに変貌した女の反撃の狼煙があがる。男の浮気に対する女の非情な復讐を描いた小説です。

大手商社の宣伝部に勤める主人公の浅井義雄は、妻・道子と結婚して15年になるが子供はいなかった。
過去二度も夫に浮気された経験を持つ妻の道子は、夫の愛情をつなぎとめることに必死だった。
そんな折、取引業者の小柳と銀座で飲み歩くうち、浅井はマチ子というホステスに誘われるまま一夜を共にする。
妻にはない淑やかなマチ子に惹かれる浅井、しかし、それはあくまでも遊びのつもりだった。

情事を楽しみながら、仕事も人生も順風満帆と思っていた男の勘違いと愚かしさ、そして、愛が憎しみに変貌した時の女の凄絶な執念には凄みがあります。
いくら社会的地位や外見が良くても、人を裏切れば必ずしっぺ返しが待っている、そのことを痛感させられました。
女性には痛快で、男性には恐怖の作品です。

★ 地唄

地唄

おすすめ度


収録作品は、著者の文壇登場作となった『地唄』、『美っつい庵主さん』『江口の里』『三婆』『孟姜女考』の五作品です。

『三婆』: 金融業で大金持ちとなった武市浩蔵は、広大な庭にいくつもの茶室を造らせるほど茶道に熱中するが、突然の空襲で家を失う。
妾と共に転り込んだ先は妹の家であった。
前々からこの妾を嫌っていた妹は、当てつけに疎開先から本妻を呼び寄せ同居することになるが、ここから女性同士の壮絶ないがみ合いが始まる。
戦後、妹の家は進駐軍によって摂取、武市浩蔵も急死する。
仕方なく庭の茶室に各々移り住むことになった三人であったが、老いと共に次第に助け合い、寄り添って生活するようになって行く。

わたしは『三婆』が、女性の生き方や強さ、弱さを考えさせられ特に印象が深い。

★ 紀ノ川

紀ノ川

おすすめ度


紀州和歌山の素封家を舞台に、明治、大正、昭和と続く時代を母娘三代が美しく、そしてたくましく生き、成長していく様子を描いた作品です。

紀ノ川の上流、九度山村で美しく育った「花」は、日本の伝統の流れに身を任せる模範的な生き方をする。
古風な躾を施そうとする「花」にことごとく反発する長女「文緒」、そして、母親に似ず、古いものに対して反抗的ではない戦後世代の孫「華子」。
この第三部に登場する「華子」は、著者自身がモデルになっていることでも有名です。

★ 華岡青洲の妻

華岡青洲の妻

おすすめ度


一人の男に人生を懸けた二人の女の確執を、封建社会における「家」と女とのつながりの中で浮き彫りにした作品で、女流文学賞を受賞した小説です。

世界で初めて全身麻酔による乳がんの手術に成功した医者の華岡青洲。
しかし、その偉大な業績の陰には、麻酔薬を完成させるために自ら進んで実験台となった妻と母がいた。

わたしは、青洲が妻と母に処方した麻酔薬の違いや、最後の墓石の描写が特に印象的でした。

★ 恍惚の人

恍惚の人

おすすめ度


老人性痴呆(認知症)となった義理の父を、嫁として介護していく状況を通し、老いの問題と家族のつながりを描いた作品です。

この小説が書かれて30年以上が経過するが、日本の高齢化が深刻化する中、老人福祉政策はどれほど改善されたのであろうか。
わたしは、主人公である主婦が、高校生の息子の放尿する音から勢いはじけるような若さを感じ、舅の老いと対比させる場面が特に印象的でした。
また、誰もが向き合わなければならない老いの問題、核家族化・高齢化していく社会に、将来の底知れぬ恐ろしさと哀しさを感じました。

★ 複合汚染

複合汚染

おすすめ度


複合汚染という現象から、日本の環境問題を広く国民に知らしめた記念碑的作品です。

われわれ消費者は、見た目や便利さから無意識に毒性の強い商品を選んでいる。
そして、生産業界は安全性より利益を優先し、その利益を日本の行政が守っている現状。
日本では、これまで様々な環境問題が指摘されていたにも関わらず、具体的な対策が遅れ、数多くの生命が奪われた。
一方、アメリカでは、ケネディ大統領によって数々の法案が立案・成立し、環境問題に素早い対策をとった。
日本が公害の人体実験先進国として、欧米から好奇の目で見られているという現状は、今も続いているのかもしれません。
わたしは、環境問題を蔑ろにしてきた日本の行政に強い憤りを感じぜずにはいられませんでした。

★ 非色

非色

おすすめ度


進駐軍の黒人兵士と結婚し、戦争花嫁として、戦後の日本やアメリカで人種差別に遭いながらも逞しく生きていく姿を描いた作品です。

人間はなぜ同じ人間を差別するのでしょうか。
また、差別というものは、いったいどこから生まれてくるものなのでしょうか。
複雑な人間関係が絡む差別という実態を、筆者は非常にリアルに、かつ明確に描いている。
人種差別の実態は複雑で、肌の色だけに起因する単純なものではないことを知るが、そういった世界の中で逞しく生き抜く決意をする主人公に、わたしは勇気を与えられたような気がします。

★ 悪女について

悪女について

おすすめ度


富小路公子という有名な女性実業家が、ある日飛び降り自殺をする。
彼女の謎の死の真相を探るべく、某小説家が27人もの人物にインタビューを試みる。
この作品は、インタビューで浮かび上がってくる、恐ろしくも奇想天外に悪を愉しんだ女の一生を描いた小説です。

虚言癖があり、自分に都合のいいように嘘をつく、 女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄する。
しかし、殆どの人物は、「彼女はそんな人じゃない」と擁護する。
次第に彼女の「悪女」が明らかになってくるが、彼女の内面にある孤独感が伝わってくるように感じた。

★ 香華

香華

おすすめ度


自由奔放に男性遍歴を重ねる母と、その母ために芸者屋へ売られた娘が、母を恨みながらも、親孝行せざるを得ない娘の切ない心情と、負けん気の強さを描いた作品です。

その後芸者を辞めた彼女は、戦後の混乱の中、一軒の料理屋を開業し繁盛するが、その拡張工事中に突然倒れてしまう。
そんな中、母の郁代が娘の病院に駆けつける途中、事故で亡くなったことを知る。

切ってもきれない親子の絆、決して母を見捨てることはできなかった娘のひたむきさが、特に印象的でした。

★ 出雲の阿国

出雲の阿国

おすすめ度


歌舞伎の創始者である阿国、やがて阿国歌舞伎は天下一として名を高める。
踊り手として芸能史に燦然と輝く阿国の妖艶な生涯を描いた作品です。
昭和四十四年度の芸術選奨受賞作。

阿国は、「天下一」であった故にいつも孤独であったように思う。
しかし、死ぬその日まで踊ることができた阿国は、きっと満足だったに違いないと感じた。

★ 芝桜

芝桜(上)

おすすめ度


花町の世界に溺れることなく、自らの意思で生きて行こうとする潔癖な性格の正子と、ずるがしこくて要領がよく、金の為なら安易に男に任せる蔦代。
二人の芸者の人生模様を、全盛期の花柳界を舞台に興味深く描かれている作品です。

二人の女性の考え方や行動は全く対照的で、彼女たちが織り成す人生の描写に、わたしは逞しさと物悲しさを感じた。

★ 木瓜の花

木瓜の花

おすすめ度


『芝桜』の続編、主人公である正子と蔦代のその後を描いた作品です。

芸者を辞め割烹料亭を営む正子は、蔦代の母が足袋はだしで店に飛び込んできた事から、10年以上も会うことのなかった蔦代とふたたび付き合うことになってしまう。
時代背景は変わっても、相変わらず二人の関係は騙し騙されの繰り返しである。

作品の要所要所にでてくる木瓜の花の描写と二人の女性を対峙させ、女の老いを感じさせるシーンがとても切なく印象的であった。

★ 有田川

おすすめ度


蜜柑栽培に情熱を燃やし、蜜柑の小母んと呼ばれた千代。
有田川の氾濫に幾度か運命を弄ばれる千代の、逞しく生きる姿を爽快に描いた作品です。

男と同等の力仕事をこなす千代、蜜柑畑で飛び交う威勢のいい紀州弁、蜜柑農家で生きいきと働く彼女の情熱がありありと伝わってくるようである。





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